義務教育とは何が違う? 高校生の不登校について徹底解説

「不登校」と一口に言っても、義務教育の不登校と高校生の不登校だと事情も変わります。心身ともに成長しているので、無理に学校へと連れて行くのは難しくなってきます。

「高校生になってから休みが続いている」

「不登校になる原因は何だろう」

いろいろな想いがありますよね。先行きが見えずに不安になってしまうことも少なくありません。今回は、高校生の不登校について解説していきます。

筆者は高校のスクールカウンセラーとして6年間勤務しており、いろいろな不登校のケースにかかわってきました。現場の感覚を大切にしながら解説していきます。

中学校と高校の違い

高校進学率は95%を超える高水準です。中学校を卒業したら高校へと進学するのが当たり前ので、「高校は中学の延長」という感覚もあるでしょう。しかし、高校はすでに義務教育ではありません。中学校と異なるところは多くあります。まずは、その違いについて説明していきます。

勉強の難易度

当たり前のことですが、勉強の難易度が変わります。中学校までは、特に勉強せず授業だけ聞いていればできるという生徒も少なくありません。しかし、高校レベルの内容をきちんと理解しようとすると、自学自習が必要になってきます。今まで自学自習の習慣がなかった生徒にとっては、「今までできていたはずのことができなくなってくる」という経験をすることになります。日本の高校はまだまだ個別指導や特別支援について遅れています。そのような理由もあり、一度躓いてしまうとなかなか取り戻せないのです。

特別支援や個別指導に関しては、中学のほうがかなり進んでいます。どのような原因で学習に遅れているかにもよりますが、通級指導教室や放課後学習などを利用することもできます。中学校までは、当たり前のようにあった支援が高校生になるとなくなってしまいます。

進級規定

義務教育では留年することがほとんどありません。どんなに通学していなくても、春になれば一つ上の学年へと進むのです。中学校卒業程度の学力が身についていないとしても進級し、卒業していきます。

高校になると、多くの学校で進級規定が設定されています。その規定に沿って進級や留年が決められます。多くの場合、出席日数と単位認定がその条件になっています。

同じ高校に通う生徒の学力格差が中学ほど大きくない

中学校は私立を除き、住んでいるところで通う生徒が決められます。同じ地域には勉強が得意な子もいれば不得意な子もいます。そのような事情もあり、公立中学校はかなり学力格差があります。一般的に、授業はそのクラスの平均的な学力に合わせて進みます。ついていけない子にとっては早く、わかる子には遅いという状況になります。

高校は学力によって学校が分かれますので、中学校ほど学力格差が大きくありません。その点、授業の進度は多くの生徒にとってちょうどよくなります。その結果「中学よりも高校のほうがわかりやすい」と感じる生徒は多いです。

高校生の不登校で気を付けなければならないこと

ここまで、義務教育(主に中学校)と高校の違いについて確認しました。義務教育では「不登校は一概に悪いわけではない」という論調もあります。しかし、高校生になると「学校に行かない選択肢もある」という声も大きくなり、風当たりも強くなってきます。もちろん、いじめや体罰の問題で行けなくなってしまっている場合はこの限りではありません。高校生の不登校はどのようなことに気を付けなければならないのでしょうか。

留年が普通にある

前述したように、高校生になると中学校までと違い厳しい進級規定を持っています。その条件をクリアしないと留年してしまいます。学校にもよりますが、進級規定には出席について述べられた項目、単位認定について述べられた項目が存在します。

出席による留年

まず欠席が累積することによる留年です。「いくつ以上で留年になる」というのは、学校によって大きく差があります。大体登校日数の30%程度欠席がたまると、進級できないところが多いのではないでしょうか。遅刻と早退の扱いについては様々ですが、遅刻と早退が合わせて3回になったら欠席1回に換算されるのが主流です。

単位未認定による留年

学校により、その学年でとらなければならない単位が決まっています。週一回の授業で1単位です。つまり、国語の授業が週に3回あるとすれば、国語は3単位になります。教科担当が「この子は1年生の国語OKです」といえば、国語の3単位が認定されます。逆にOKが出なければ未認定になります。

全日制の学校であれば、学年制(1年生、2年生、3年生と進級していく)を採用しているところが多いので、1科目でも単位が認定されないと留年となってしまう学校がほとんどです。進級規定には単位が認定されなかったら留年するということが書かれています。

それでは、単位認定の基準は何なのでしょう。主に「授業を欠席しすぎていないか」、「テストの成績と平常点を合わせて合格ラインに達しているか」の2点です。

学校自体の欠席と区別するために授業に出ていないことを欠課といいます。不登校は出欠による留年だけでなく、単位未認定による留年のリスクにもなります。

いじめや体罰の問題がないか

これは、義務教育までと共通することです。いじめや体罰など、「行きたくてもいけない要因」の有無は真っ先に確認しなければなりません。もし被害者であるならば、登校できないことによる不利益を被るのはおかしな話です。

相手側に責任を取ってもらい、一刻も早く安心安全に登校できるようにしなければなりません。学校側と話し合い、埒が明かない場合は弁護士など外部の力を借りるのもよいでしょう。

病理的な可能性についても視野に入れる

引きこもりや、登校する元気がなくなってしまう病気はいくつかあります。統合失調症などは幻覚妄想などの症状があまり出ないで、元気がなくなる症状が強く出ることもあります。その場合は、「体は元気なのに学校に行かないなんて甘えだ」と受け取られてしまうこともあります。

病は治療の対象です。しっかりした治療を受ければ回復して学校に通えるようになる可能性も上がります。生徒の話をよく聞いて、少しでも「おかしいな」と思うことがあればスクールカウンセラーや、医師に相談してみましょう。

まとめ

義務教育と高校では、進級規定や勉強の難易度、学力格差などの面で違いがありました。中学校まではよほどのことがない限り、留年はありませんでしたが、高校になると出席と単位認定の面で留年があります。不登校といっても体罰やいじめが背景にある場合は、その不利益を生徒が被るのはおかしな話です。学校側と話し合い一刻も早く安心安全に登校できる体制を整えてもらいましょう。思春期は、様々な病気が発症しやすい時期でもあります。頭ごなしに「甘えている」と決めつけるのではなく、病理的な要因があるかもしれないと考えてみる必要もあります。

高校のスクールカウンセラーとして6年間勤務しており、いろいろな不登校のケースにかかわってきました。現場の感覚を大切にしながら解説していきます。

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不登校であったり、休みがちで、なかなか出かける機会がない、きっかけやタイミングがない、という小中高生のための山登りプロジェクトです。学校という機会がないと、なかなか運動する機会がないのが実情だと思います。運動する機会を作ることで、生活習慣を整えたり、気力が生まれるきっかけとなったらと思っています。また、心の悩みは人間関係から生まれてきます。集団で山登りをしますが、黙々と登っていただいてもかまいません。自然の中に身をおくことで、これまでと違った見方が生まれたらと思っています。